日本酒はどうやってできるの?日本酒の作り方・製造工程を知ろう
日頃から多くの方に親しまれている日本酒。日本酒が完成するまでにはさまざまな工程や人の手が加わっており、その一つひとつが、日本酒の味を左右しています。
今回はより深く日本酒を知っていただくためにも、お酒造りのながれ(製造工程)をご紹介します。
日本酒の作り方(製造工程)
日本酒ができるまでには、さまざまな工程を要します。お酒造りの基本的なながれを、簡単にご説明します。
精米
日本酒の主原料である、米を精米することから酒造りはスタートします。
ちなみに多くの場合、食用米ではなく、酒造り専用の「酒米」を使います。
酒米は、食用米と比べるとタンパク質の含有量が低く、粘り気が少ないのが特徴。米の中心部(心白)が大きいので吸水性に優れており、麹が育ちやすく発酵にも適しています。
精米歩合とは、精米して残った米の割合を%で表したものです。日本酒造りに使われるお米の精米歩合は、70%前後が一般的。大吟醸酒になると50%以下までお米が磨かれます。
精米歩合については、下記の記事でも詳しくご紹介しています。
洗米/浸漬(しんせき)
次に、精米した米を洗い、糠(ぬか)を取る工程に入ります。家庭でご飯を炊く際に米を研ぐのと同様、ここで米の糠や汚れを取らないとおいしい日本酒を造ることはできません。
洗米の後、適量の水分を吸収させるために、米を水に浸す「浸漬(しんせき)」を行います。浸漬時間は、米の品種やその年の米の出来具合、精米歩合など米の状態や、気温・湿度といった外部環境などによって異なります。
また、酒米は食用米と比較すると吸水スピードが早く、浸漬時間が数秒でも違うと吸水具合も違ってきます。
蒸米/放冷
水分を含ませた米を蒸していきます。甑(こしき)と呼ばれる大きなせいろか、蒸米機によって蒸されます。
酒米を蒸すことによって、米のでんぷん質が変化。酒造りに適した水分量に調整できるとともに、殺菌効果もあります。
蒸した米は、麹(こうじ)造り、酒母造り、掛米(もろみ造り)用と、それぞれに応じた温度に冷まします(放冷)。
放冷は、放冷機を使用することが多いですが、筵(むしろ)の上に広げて自然放冷する方法もあります。
麹(こうじ)造り
米や大豆、麦などの穀物にカビの1種である麹菌を繁殖させたものを「麹(こうじ)といいます。日本酒造りでは、蒸した米を利用し、米麹を作ります。
この米麹は、お酒の原料となるでんぷんを糖化させる、お酒の旨味の元になるという役割があります。そのため、質の良い麹になるかどうかで日本酒の質を左右してしまうほど重要な工程です。
米麹は、麹菌を米に付着させ、米の中で麹菌を繁殖させることで出来上がります。この作業を「製麹(せいぎく)」とも呼びます。
日本酒の麹菌については下記の記事でも詳しくご紹介しています。
酒母造り
酒母とは、アルコール発酵を促す酵母を大量に増殖させたもの。
麹と水を混ぜ合わせたものに、酵母と乳酸菌、さらに蒸米を加えます。一般的には、2週間から1カ月で酒母が完成します。
乳酸菌からつくる乳酸は、日本酒にとって必要のない菌を死滅させてくれます。そのため、酒母造りでは乳酸が欠かせません。
また、米をすり潰す作業を行う製法が、「生酛(きもと)造り」です。生酛(きもと)造りの場合、乳酸の添加はせず、蔵の空気中の乳酸菌を取り込みます。
醪(もろみ)・仕込み
酒母をタンクに入れ、麹、蒸米、水を加えて発酵させます。発酵には約3週間から1カ月かかり、日本酒の元となる、発酵した状態を「もろみ」と呼びます。
酒母の中に麹、蒸米、水を入れる際は、全量ではなく3回に分けて、ゆっくりと発酵させることが大切。これを「三段仕込み」といいます。
日本酒の三段仕込みについては、下記の記事でも詳しくご紹介しています。
上槽(じょうそう)
発酵期間が終わると、もろみをしぼって(圧搾)、日本酒と酒粕に分ける「上槽(じょうそう)」が行われます。上槽の方法は、自動圧搾機や槽搾り、袋吊りがあります。現在は、自動圧搾機でしぼるのが一般的です。
また、いつどのタイミングで酒をしぼるかは、日本酒の味を決めるうえで非常に重要です。それぞれの酒蔵や日本酒の種類によって変わるほか、天候、成分分析値などを元に判断されます。吟醸酒や本醸造酒などは、上槽の直前に醸造アルコールを添加します。
上槽工程については、下記の記事でもご紹介しています。
濾過(ろか)/火入れ
しぼったばかりの日本酒には、細かくなった米や酵母等の小さな固形物が残っております。それらを除去するため、濾過(ろか)します。その後の加熱処理が「火入れ」です。
火入れすることで、酵母の発酵が止まり、日本酒の品質を一定に保ちます。
貯蔵/調合・割水
火入れの後、熟成させるために貯蔵します。約半年から1年かけて貯蔵・熟成された日本酒は、まろやかな味わいに変化。熟成した原酒を、各銘柄に合わせて割水を行い調合します。
割水とは、出来上がった日本酒に水を足して、アルコール度数を調整すること。割水を行わず出荷される日本酒は原酒と呼ばれます。
火入れ/瓶詰め
いよいよ日本酒造りも最終工程です。出荷前、調合されたお酒にもう一度火入れをし、酒を安定させます。その後、瓶やパックに詰めて、完成です。
日本酒の製造工程で変わる、味わいを楽しもう
ここまでで、基本的な日本酒造りの工程をご紹介しました。
製造の過程にある火入れや貯蔵の有無によって、さまざまな味わいの日本酒を楽しむことができます。
火入れの有無や回数で異なる味わい
製造から出荷まで、火入れをしない状態の日本酒を「生酒」といいます。清涼感のある味わいと、サラリとした飲み口が特徴です。生酒ならではの爽やかな香りも魅力のひとつ。
他にも、火入れを行わずそのまま貯蔵し、出荷前に一度火入れを行ったものを「生貯蔵」といいます。生貯蔵の日本酒は、生酒の持つフレッシュさだけではなく、まろやかな口あたりと旨味をたっぷりと感じられます。
また、貯蔵前に火入れを行い、出荷前は火入れを行わず出荷したものは「生詰(なまづめ)」といいます。生酒のようなフレッシュさはあるものの、酸味が落ち着き、口あたりが優しいのが特徴です。
このように、火入れの有無や回数、火入れを行うタイミングで味わいが異なります。
火入れのタイミングについては下記の記事でも詳しくご紹介しています。
蔵で貯蔵されずに出荷する「新酒」
火入れをした後、蔵での貯蔵・熟成を経ていない段階のものが「新酒」です。正式には、7/1~翌年6/30までの酒造年度内に造られて出荷された日本酒を「新酒」と呼びます。しかし、「酒造年度の初めにしぼったお酒」や「秋から冬に仕込み、春くらいまでに出荷されるお酒」が「新酒」として認知されています。
新酒は、しぼりたてを瓶詰めしているのでフレッシュな味わいが特徴です。
ただ、新酒は熟成途中のため、日本酒のまろやかさを引き出したいときには冷蔵庫で保存しましょう。次第に角が取れ、味わいにも丸みが出てきます。
割水をせず濃醇な味わい・香りが特徴的な「原酒」
調合・割水の工程でも説明しましたが、原酒とは、割水(加水調整)を行う前の日本酒のことです。
割水せずに出荷される「原酒」は、アルコール度数が高いだけでなく、日本酒本来の濃醇な香りと旨味を楽しめます。
原酒については、下記の記事でもご紹介しています。
味わいの違いを発見できる、沢の鶴のおすすめ日本酒
ここでは、味わいの違いを見つけられる沢の鶴おすすめの日本酒をご紹介します。
47%まで米を磨いた純米大吟醸「瑞兆(ずいちょう)」
お米を50%以下に磨いている、雑味のないまろやかな味わいの純米大吟醸酒です。味吟醸タイプなので、華やかで爽やかさもある香りと奥深いコクのコントラストを楽しめます。
瑞兆とは、よろこびの兆しという意味があるため、祝い酒にぴったり。お祝いの品としての贈り物や、ハレの日においしいお酒を飲みたいという方におすすめです。
加水せず豊かな味わいの「純米原酒」
加水は行わず蔵でしぼったままの充実した味わいを楽しめる日本酒です。後口のキレが良い濃醇辛口なので、旨味の強い料理や味わいにコクのある料理とマッチ。
冷や(常温)やオン・ザ・ロックなどさまざまな飲み方で楽しめます。
生酛造りの本醸造酒「生酛造りのきもとさん」
生酛造りによって手間ひまかけて造った本醸造酒「生酛造りのきもとさん」。
まろやかな口当たり、ふくらみのある旨味がありながらも、後味にキレがある日本酒です。
桶に入ったきもとさんが描かれたユニークなパッケージが特徴的で、食中酒にもおすすめです。
お燗にすると、冷酒とは違った味わいを楽しめます。
「限外濾過」技術による純米生原酒「100人の唎酒師」
酵素を極限まで取り除く「限外濾過(げんがいろか)」技術によって、火入れを一切しない生酒でありながら常温保存が可能な日本酒です。生酒本来のフレッシュさを堪能できます。
原酒ならではのコク深い味わいで、オン・ザ・ロックにすると飲みやすく、食中酒にもぴったりです。
- 純米生原酒
- 限外ろ過製法
美味しい日本酒を届けたい。100人のきき酒師の物語。
- アルコール度数:
- 18.5度
- 飲みごろ温度:
- 10℃(花冷え)~15℃(涼冷え)、20~25℃(常温)
おわりに
日本酒は、多くの製造工程を経て造りあげられ、随所に造り手の技が加わっています。特に発酵後の上槽(じょうそう)の作業では、タイミングや天候によって日本酒の風味に変化が出るほど。また、火入れをしていない「生酒」や「生貯蔵」「生詰」、出来上がったばかりの日本酒である「新酒」なども、普段とは違う味わいを楽しめます。さまざまな種類の日本酒を試して、自分好みの1本を見つけてみてください。
1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。
沢の鶴はこれからも日本酒文化を大切にしながら、みなさまの毎日の食事がもっと美味しくなるお酒造りを続けていくと共に、このWEBメディア『酒みづき』を通して、より多くの方々に日本酒の美味しさや楽しみ方に関する情報をお届けしてまいります。
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※お酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量を。飲酒運転は、絶対にやめましょう。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児に悪影響を与えるおそれがあります。
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