醸造アルコールとは?醸造アルコールを含む日本酒の種類と特徴
日本酒のラベルに書かれている原材料名の中に、「醸造アルコール」という文字を見たことがありますか?日本酒は米、米麹、水だけを原料に造られたものと、さらに醸造アルコールが添加されたものと大きく2つに分かれます。それでは、醸造アルコールはどのような役割を果たしているのでしょうか。今回は醸造アルコールについて詳しく解説します。
Contents
日本酒の原料:醸造アルコールとは?
醸造アルコールは、主にサトウキビを原料として発酵させた純度の高いアルコールのことを指します。サトウキビ由来の香りや味はほとんどなく、クリアな味わいをしています。
甲類焼酎は、アルコール度数が36度未満に調整された醸造アルコールで、缶チューハイなどのアルコールも同じです。
醸造アルコールは通常、大手アルコールメーカーが製造し、各蔵がそれを購入して日本酒に添加しています。ただ、最近では醸造アルコールを自家製にしている蔵も出てきています。
日本酒に醸造アルコールを添加するタイミング
醸造アルコールの添加は、上槽(醪を搾って日本酒と酒粕に分ける)の前に通常は1日前、吟醸酒などは直前に行います。醪をしぼった後に添加することは酒税法の規定では認められていないため、必ず醪をしぼる前に添加されます。
醸造アルコールは、体に悪い?
「醸造アルコールを添加する」と聞くと、イメージだけで「悪酔いしそう」「質が悪そう」と思う方もいるかもしれません。
このイメージは、戦後に深刻化したお米不足から「三増酒(三倍増醸酒)」が造られたことが原因といわれています。三増酒とは、日本酒の原酒に醸造アルコールや甘味料、酸味料などを加えて3倍増し程度にして造られた日本酒のことです。現在の法律では、三増酒を造ることは禁止されているため、三増酒は出回っていません。
また、醸造アルコールは発酵によって造られた純度の高いアルコールで、合成アルコールは認められていません。体に悪いものが入っていませんので、醸造アルコール自体が悪酔いの原因にはならないのです。
醸造アルコールが含まれる日本酒の種類
醸造アルコールが添加されている日本酒は、精米歩合や製法によっていくつかの種類に分類されます。
吟醸酒、大吟醸酒
吟醸酒・大吟醸酒は、使用するお米の重さの10%以下のアルコールを添加し、吟醸造りという製法で造る日本酒です。精米歩合が60%以下のものを「吟醸酒」、50%以下は「大吟醸酒」と呼びます。
米をよく磨くことでできあがる雑味のないクリアな味わいと、低温発酵による華やかな香りが最大の魅力です。
本醸造酒
精米歩合が70%以下で、香味と色沢が良いものを「本醸造酒」と呼びます。添加するアルコールは、吟醸酒・大吟醸酒と同じく、日本酒造りに使うお米の重さの10%以下と決まっています。本醸造酒の最大の特徴は、スッキリとしたキレのある味わいです。
なお、精米歩合が60%以下のものや特別な製法で造られた本醸造酒のことを、特別本醸造酒と呼びます。
普通酒
吟醸酒、本醸造酒、純米酒などで、特定名称酒として区分されないお酒を一般的に「普通酒」と呼んでいます。
普通酒は、毎日飲んでも飽きがこない軽い味わいが最大の特徴です。クセが少ないため、飲みやすいのも普通酒ならでは。価格も日常酒として楽しめるように抑えられたものになっています。
醸造アルコールを加えない日本酒は、「純米酒」となります。純米酒は米本来の味わいや香りが特徴的な日本酒です。
醸造アルコールはどんなはたらきをする?
醸造アルコールのはたらきについて解説します。
日本酒の味わいが軽くクリアになる
醸造アルコールは非常に辛口で、それを添加した日本酒も必然的に辛口になります。加えて、飲み口が軽いため、添加することでクリアな味わいの日本酒に仕上がります。
醸造アルコールを添加したお酒は料理との相性も幅広く、燗酒にも適しています。
日本酒の香りを生み出す
酵母の香気成分は、水よりもアルコールに溶けやすいという性質があります。
醪(もろみ)にアルコールを添加することで、アルコールに酵母が溶けて、酵母の香りが日本酒に移りやすくなっているのです。「吟醸香」と呼ばれる吟醸酒や大吟醸酒のフルーツのような華やかな香りは、醸造アルコールの添加によって、より引き出されています。
日本酒の個性になる
日本酒は、先程ご紹介したようにアルコール添加された種類に加え、米、米麹、水だけで造られる「純米酒」があります。また、種類だけでなく銘柄によっても個性を出せるように、酒造会社は創意工夫を続けています。
醸造アルコールはその有無だけでなく、量によっても日本酒の香りや味わいに変化をつけられるため、日本酒の個性づくりに一役買っているといえるのです。
醸造アルコールを添加したおすすめの日本酒
醸造アルコールを添加した沢の鶴おすすめの日本酒をご紹介します。
生酛造りのきもとさん
「生酛造りのきもとさん」は、チャーミングなきもとさんがパッケージの生酛造りで造られた日本酒です。生酛造りとは、日本酒に欠かせない乳酸菌を自然に発生させ、酵母に活力を与えて力強い味わいを生み出す製法です。
コク・キレ・旨味をしっかりと感じられつつ、本醸造酒ならではの口当たりの軽さも楽しめます。
冷や(ストレート)やお燗で飲むのがおすすめです。
なまんま
香りや味わいを長期間維持することができる限外濾過製法によって造られた本醸造生酒です。生酒は、日本酒の製造過程で一度も火入れ(加熱処理)を行わない日本酒のこと。「なま」ならではのしぼりたてでフレッシュな香りと味わいが楽しめます。
ふくらみのある米の旨味と、すっきりとした後味が心地よく、軽やかな味わいなので食事に合わせやすい1本です。しっかりと冷やして飲むのがおすすめです。
おわりに
今回は、醸造アルコールについてお伝えしてきました。醸造アルコールを添加する日本酒も、醸造アルコールを添加しない純米酒も、それぞれに個性があり味わいの違いが楽しめます。普段飲んでいる日本酒だけでなく、さまざまな製法の日本酒も試していただき、新たなお気に入りの1本を見つけてみてはいかがでしょうか。
1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。
沢の鶴はこれからも日本酒文化を大切にしながら、みなさまの毎日の食事がもっと美味しくなるお酒造りを続けていくと共に、このWEBメディア『酒みづき』を通して、より多くの方々に日本酒の美味しさや楽しみ方に関する情報をお届けしてまいります。
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