公開日: 日本酒と健康・美容

「酒は百薬の長」とは?「万病の元」にしないためのお酒の飲み方

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酒は百薬の長「酒は百薬の長(さけはひゃくやくのちょう)」という言葉、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。「適量のお酒は、どんな良薬にも勝る」という意味をもつ言葉ですが、実は「されど万病の元」と続く文献もあります。果たして、お酒は百薬の長といえるのでしょうか。
そこで今回は、「酒は百薬の長」の言葉の由来やお酒の健康に対する影響、お酒を健康に楽しむための飲み方・適量についてお伝えします。

「酒は百薬の長」の由来は?

「酒は百薬の長」という言葉は、中国古代の史書『漢書』の「食貨志(しょっかし)第四下」に出てくる一節に由来します。

 

前漢王朝を奪った王莽(おうもう)という武将が新(しん)王朝を設立し、酒・塩・鉄などを国の専売制にしようとしました。その命令を言い放つ際に「酒は百薬の長」という言葉が使われています。この記述こそが「酒は百薬の長」の由来です。しかし、この発言に至った理由は語られておらず、医学的な根拠や真意はわからないとされています。

「酒は百薬の長」の続きについて

漢書に記された「酒は百薬の長」という言葉は、時代と海を越えて日本に伝わります。

鎌倉時代~南北朝時代にかけて活躍した日本の歌人・吉田兼好の随筆「徒然草」には、漢書の言葉を受けて「百薬の長とはいへど、よろづの病はさけよりこそおれ」という記述があります。馴染みのある文章に言い換えると「酒は百薬の長、されど万病の元」となり、「お酒はどんな良薬にも勝る、ただし飲み過ぎなければ」という意味合いに訳すことができるでしょう。

 

ではこれらの言葉の通り、「飲み過ぎなければ良薬」とは正しいのでしょうか。続いては、心身に良いといわれているお酒の効果についてご紹介します。

「酒は百薬の長」は嘘?体に良いと言われているお酒の効果

お酒を飲むことで、以下のような身体的効果が期待できるといわれています。

  • 食欲増進
  • 血行促進
  • ストレス緩和

食事の場で「食前酒」が提供されるように、適量なお酒は胃酸の分泌を促進させ、食欲を高める働きがあるといわれています。居酒屋や晩酌でご飯が進むのも、お酒によって胃の働きが活発になるからでしょう。

 

また、お酒の効果として血行促進も期待できるといわれています。血行促進・滋養強壮などの効用がある「薬用酒」が一般的に販売されていることからも、健康とお酒は決して無関係ではないでしょう。

 

したがって「酒は百薬の長」という言葉は、完全な眉唾ものではないといえそうです。ただし「適量を守った場合に限る」という添え書きがあることに変わりありません。度が過ぎた飲酒では、上記のような効果を得ることは難しいでしょう。

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「万病の元」の“万病”とは?

続いては「されど万病の元」の万病についてです。飲酒の適量を守らないと、どのような健康への悪影響が考えられるのでしょうか。「厚生労働省 e-ヘルスネット」の「アルコールによる健康障害」では、以下の健康障害が記載されています。

  • 急性アルコール中毒
  • 肝臓病
  • すい臓病
  • 循環器疾患
  • メタボリックシンドローム
  • うつ病
  • 認知症
  • 癌(がん)
  • アルコール性肝炎と非アルコール脂肪性肝炎
  • 高尿酸血症・痛風
  • 脂質異常症
  • 胎児性アルコール・スペクトラム障害

※出典:厚生労働省e-ヘルスネット「アルコールによる健康障害」(外部サイトへ移動します)

上記のように、お酒(アルコール)による健康への影響は多くあります。適切な量と飲み方をしっかりと把握して飲酒をしないと“万病の元”となる可能性があるので、留意してください。

お酒を「万病の元」にしないためには

おつまみを食べる

お酒は、私たちの食生活をとても華やかにしてくれます。

お酒の飲み過ぎで体調を崩さないためにも、以下のポイントを意識して飲んでみてください。

 

 

 

 

 

適量を守る

「適量を守る」ことは、お酒を上手に楽しむために最も重要であるといっても過言ではありません。「酒は百薬の長、されど万病の元」にも込められている大切なメッセージです。

お酒だけではなく、どのような食品でも「過ぎる」ことは健康を損なうきっかけになってしまいます。「ついつい飲み過ぎてしまう」という方は、適量を意識して飲むようにしてください。

 

厚生労働省が示す飲酒量の目安は、「1日平均純アルコールで20g程度」です。これは日本酒だとおよそ1合、ビールだと中瓶1本に換算できます。また、下記補足事項も同省によってアナウンスされているので、確認しておくと良いでしょう。

  • 女性は男性よりも少ない量が適当である
  • 少量の飲酒で顔面紅潮を来す等アルコール代謝能力の低い者では通常の代謝機能を有する人よりも少ない量が適当である
  • 65歳以上の高齢者においては、より少量の飲酒が適当である
  • アルコール依存症者においては適切な支援のもとに完全断酒が必要である
  • 飲酒習慣のない人に対してこの量の飲酒を推奨するものではない

※出典:厚生労働省「アルコール」(外部サイトへ移動します)

おつまみを食べる

日本酒は、食事とともに楽しめる「食中酒」です。

カロリーや健康が気になっても、何も食べずに飲むことはおすすめできません。

 

適度な量のおつまみは、肝臓の負担を減らし、アルコールの分解を助けてくれます。特に、赤身の肉や豆腐など良質のたんぱく質や、酵素を含む野菜は、日本酒の味わいを引き立てるだけではなく、健康的な晩酌にも一役買ってくれます。

休肝日を設ける

長く日本酒を楽しむためにも、程よく休肝日を設けましょう。

「どれくらい休ませれば良いか」には諸説ありますが、毎日のようにお酒を飲む方は、週に2日の休肝日を設定することをおすすめします。

 

また「飲み過ぎて胃腸が疲れたと感じる日」は無理に飲まず、内臓全体を休ませてあげてください。逆に「来週は飲み会続きだ!」と分かっている場合は、連続して飲む日々に突入する前に、休肝日をつくってみることもおすすめです。

12の飲酒ルールを守る

厚生労働省のe-ヘルスネットでは「12の飲酒ルール」が公表されています。適切な飲酒量や飲み方の目安として参考にしてみてください。

【12の飲酒ルール】

  1. 飲酒は1日平均2ドリンク以下
  2. 女性・高齢者は少なめに
  3. 赤型体質も少なめに
  4. たまに飲んでも大酒しない
  5. 食事と一緒にゆっくりと
  6. 寝酒は極力控えよう
  7. 週に2日は休肝日
  8. 薬の治療中はノーアルコール
  9. 入浴・運動・仕事前はノーアルコール
  10. 妊娠・授乳中はノーアルコール
  11. 依存症者は生涯断酒
  12. 定期的に健診を

※出典:厚生労働省e-ヘルスネット「飲酒のガイドライン」(外部サイトへ移動します)

健康的に日本酒を楽しむための「適量」とは?

日本酒の適量

で は、日本酒の適量とはいったいどれくらいの量なのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

基本は「1日1合」を目安にする

日本酒は、飲み始めてから20分くらいが一番心地良く感じるといわれています。これは脳から放出されるドーパミンが原因で、その気持ち良さからついつい飲み過ぎてしまうわけです。

 

肝臓に負担をかけずに飲める量としては、日本酒1合(180ml)が理想とされています。

厚生労働省主導の「国民健康推進運動・健康日本21」でも、日本人の「節度ある適度な飲酒」として、1日のアルコール摂取量は約20g(日本酒1合程度)が良いとされています。

 

しかし、おいしいおつまみがあり、仲間と楽しい時間を過ごすと1合では済まないこともありますよね。

和らぎ水が身体への負担を軽くしてくれる

1合では済まないな…という日は、お酒の横にたっぷりの水が入ったグラスを用意しましょう。

日本酒の合間にチェイサーとして飲む水を、「和らぎ水」といいます。体内のアルコール度数を下げ、水分バランスをコントロールするためにも、そして二日酔いを防ぐためにも、日本酒と同量の水を飲むことをおすすめします。

おわりに

「酒は百薬の長」という言葉は全くの嘘というわけではなく、飲酒による体への良い影響はあるといえます。体への直接的な効果だけではなく、お酒の味わいをじっくりと楽しんだり、晩酌でリラックスしたりすることも心への大切なお薬です。

ただし「されど万病の元」という言葉があることも忘れてはいけません。お酒を長く楽しんでいくためにも、日々の飲酒量や飲み方を意識して、上手に付き合っていくようにしましょう。

 

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沢の鶴株式会社 酒みづき編集部
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1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。

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