日本一の酒どころ神戸「灘五郷」で酒蔵巡り!灘の魅力や酒造りの歴史をご紹介
「灘五郷(なだごごう)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
灘五郷は、日本一の酒どころである兵庫県神戸市・西宮市の沿岸部で醸造されている灘酒の産地の総称で、日本酒ファンが一度は訪れたい「聖地」としても知られています。
この記事では、灘五郷の魅力と酒蔵巡りの楽しみ方、おすすめの日本酒などを具体的にご紹介します。
Contents
灘五郷とは?
灘五郷(なだごごう)とは、兵庫県神戸市灘区新在家から西宮市今津までの沿岸約12kmの地域に位置する、日本酒の生産が盛んな5つの地区のことです。
なお、「郷」とは村の集合体という意味で、灘五郷という地名が実際にあるわけではありません。
具体的には、以下5つの地区が灘五郷と呼ばれています。
- 神戸市灘区西郷(にしごう)地区
- 神戸市東灘区御影郷(みかげごう)地区
- 神戸市東灘区魚崎郷(うおざきごう)地区
- 西宮市西宮郷(にしのみやごう)地区
- 西宮市今津郷(いまづごう)地区
灘五郷は日本一の酒どころとして有名で、日本全国で販売される日本酒の約25%が灘五郷で醸造されています。
灘五郷の始まりと歴史
灘地区での酒造りは、江戸時代初期(1624年頃)に雑喉屋文右衛門(ざこうやぶんうえもん)が伊丹から西宮に移って始めたのが最初です。しかし、伝承の上では室町時代(1330年頃)からすでに酒造りが行われていたともいわれています。
江戸時代初期~中期にあたる明暦から享保(1655年~1736年)までの間は、灘地区で創業した酒造が多いことからも、灘の酒造りが急速に拡大していった時期といえるでしょう。
沢の鶴も、享保2年(1717年)の創業です。
明和(1764年~)には上灘(神戸市東灘区)、下灘(神戸市中央区)、今津郷(西宮市)の3郷が灘の酒造りの中核を担っていましたが、文政(1828年~)には上灘が東組・中組・西組の三組に分かれ、東組の魚崎、中組の御影、西組の新在家・大石が中心となりました。この上灘三組と、下灘・今津が江戸時代の灘五郷として発展していきました。現在の今津・西宮・魚崎・御影・西郷からなる灘五郷とは、若干地域が異なっています。
灘地区での酒造りは勢いよく拡大し、江戸時代後期(1853年~)には江戸で飲まれる日本酒の8割を灘の酒造が供給していたといわれています。
日本遺産に認定
日本遺産とは、文化庁が認定する、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語る上で重要なストーリーのことです。
2020年6月には日本酒醸造の歴史的観点から、隣接している伊丹市を中心に神戸市や西宮市・尼崎市・芦屋市の5市が『「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷』として、文化庁から令和2年度の日本遺産に認定されました。
つまり、江戸時代から現代まで続く灘五郷のストーリーが、日本の文化や歴史を語る上でも重要だと認められたのです。
日本遺産の認定により、今後ますます灘五郷は国内外から注目を集めるだろうと期待されています。
灘五郷の銘柄をご紹介
灘五郷で醸造されている日本酒の銘柄は、以下のとおりです。
西郷地区 | 沢の鶴(さわのつる)・金盃(きんぱい) |
御影郷地区 | 白鶴(はくつる)・菊正宗(きくまさむね)・剣菱(けんびし)・戎面(えびすかほ)・福寿(ふくじゅ)・仙介(せんすけ)・琥泉(こせん)・大黒正宗(だいこくまさむね) |
魚崎郷地区 | 千代田蔵(ちよだぐら)・松竹梅(しょうちくばい)・櫻正宗(さくらまさむね)・浜福鶴(はまふくつる) |
西宮郷地区 | 金鷹(きんたか)・灘自慢(なだじまん)・喜一(きいち)・白鹿(はくしか)・白鷹(はくたか)・日本盛(にほんさかり)・灘一(なだいち)・寳娘(たからむすめ)・島美人(しまびじん)・德若(とくわか) |
今津郷地区 | 大関(おおぜき)・扇正宗(おうぎまさむね) |
灘五郷は、2018年6月28日に国税庁長官の指定を受けた酒類の地理的表示(GI)の指定を受けました。
「GI灘五郷」と称された清酒は、「味わいの要素の調和がとれ、後味のキレの良い酒質」という特性があることが保証されており、2021年1月時点では11社44銘柄の灘五郷の日本酒が「GI灘五郷」として認定されています。
灘五郷が酒どころとして栄えた理由
それでは、なぜ灘五郷が酒どころとして栄えたのでしょうか?
灘五郷が酒どころとして栄えた理由は、以下の2つにあります。
- 自然が生んだ豊かな環境
- 海上輸送の重要拠点として江戸時代から発展
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自然が生んだ豊かな環境
灘五郷では、次のような自然の恵みによって、日本酒造りに最適な環境ができたといわれています。
- 最適な気候と土地
- ミネラル豊富な湧き水
- 上質な酒米「山田錦」
最適な気候と土地
灘五郷や神戸市灘区で使われている「灘」の意味は、航海が難しいほど風波が吹き荒れるという意味です。
特に冬場は、明石海峡を吹き抜ける西風と六甲おろしによる強い寒風が吹き荒れます。この風をうまく活用するために、灘五郷では「重ね蔵」という構造を採用しました。これにより、冬には冷たい風をそのまま取り込むことで低い温度を維持でき、夏には温度が上がりすぎない、日本酒造りに適した環境ができたのです。
このように山と海に囲まれた灘五郷の自然が、良質な日本酒造りを可能にする「寒造り」に欠かせない環境を生みました。
ミネラル豊富な湧き水
灘五郷で使用される「宮水」(六甲山の湧き水)はミネラルを豊富に含み、さらに鉄分が少ないため日本酒造りに適しています。
ミネラルは酒米を発酵させるための酵母や麹の栄養分となり、キレのあるおいしい日本酒を生み出すのに重要な要素の一つです。
上質な酒米「山田錦」
兵庫県は、日本酒造りに最適と呼ばれる米「山田錦」の産地でもあります。地元の米農家と酒蔵が手を取り合うことで、山田錦を使った最高の日本酒が造られるのです。
海上輸送の重要拠点として江戸時代から発展
灘五郷は、瀬戸内海に面した昔からの海上交通の重要拠点だったこともあり、江戸時代には船による輸送が根付いていました。
特に重要な輸送手段だったのが、「樽廻船(たるかいせん)」と呼ばれる船です。
冷蔵庫のない当時、新鮮な状態でスピーディーに日本酒を運べる樽廻船は重宝された輸送手段でした。
樽廻船では、杉で作られた樽に日本酒を入れて輸送していたため、輸送中に樽の杉香が日本酒に移り、熟成されていきます。このような要因もあり、江戸中期~後期には灘五郷の日本酒が「下り酒」※として高い評価を得たといわれています。
※下り酒とは、上方(関西)から江戸に運ばれた(下った)酒のこと。
灘五郷の楽しみ方 ~酒蔵巡り・見学~
ここからは、灘五郷に訪れた際の楽しみ方をご紹介します。
酒蔵見学で楽しめること
灘五郷には26の酒蔵がありますが、そのなかでも一般客が酒造見学できるように配慮されている酒蔵が多くあり、見学コースを設けている酒蔵のほか、無料で見学できる酒蔵や資料館もあります。
酒造りの歴史や工程について学べる
酒蔵見学では伝統的な酒造りを工程に沿って詳しく学べるほか、歴史ある貴重な酒造りの道具を見られるなど、灘酒の伝統や日本文化を体感できます。
日本酒を仕込む大きなタンクや麹造りに使われる部屋など、普段は見られないようなスケールの大きな道具を間近に見学できる蔵もあります。
見学施設は古くからある蔵を復興再建している場合や、実際に酒造りをしている様子を見学できる工房の場合など、蔵によってさまざまです。ぜひ、酒蔵を巡って蔵ごとの違いを楽しんでみてください。
日本酒の試飲ができる
酒蔵見学のポイント2つ目は、日本酒の試飲ができることです。多くの酒蔵で、しぼりたての生酒をはじめ酒蔵自慢の日本酒が試飲できます。
利き酒サービスが見学コースに組み込まれている場合もありますよ。
(※試飲サービスを行っていない酒造や、感染症対策のため実施していない場合もあります。
詳細は各酒造のホームページで確認いただくか、お電話での問い合わせをお願いします。)
目的の銘柄を楽しむだけでなく、普段は飲まない種類もぜひ試飲して、お気に入りの1本を見つけてみてください。
酒蔵によっては試飲のほか、喫茶スペースやレストランで日本酒を楽しむこともできます。
酒蔵を巡りながら試飲をする場合は、飲みすぎに注意しましょう。
限定商品が手に入ることも!
灘五郷の酒蔵では、蔵限定の商品が手に入ることがあります。普段はお目にかかれない商品をお土産に購入してみてはいかがでしょうか。
日本酒のほか、オリジナルのお菓子や漬物などを販売している酒蔵もあります。
灘五郷・酒蔵巡りのモデルコース
ここで、灘五郷の酒蔵を日帰りで堪能できる、酒蔵巡りのモデルコースをご紹介します。灘五郷は兵庫県神戸市灘区~西宮市今津までの沿岸約12kmに延びるエリアですが、今回ご紹介するのは、東灘区魚崎郷から御影郷、西郷をまわるモデルコースです。
浜福鶴 吟醸工房 → 菊正宗酒造記念館 → 神戸酒心館(福寿) → 沢の鶴資料館 |
浜福鶴 吟醸工房
浜福鶴 吟醸工房では、ガラス越しに酒造りの工程を見学できます。実際の作業場を見たり、醪(もろみ)の香りをかいだりとリアルな酒造りを体感してみましょう。生酒の試飲や有料のきき酒も楽しめます。
浜福鶴 吟醸工房についてはこちら:公式サイト
菊正宗酒造記念館
「酒造りの原点を知ること」をテーマに、国指定の重要有形民俗文化財となっている「灘の酒造用具」や小道具、昭和天皇がお座りになられた玉座などの展示物を見学することができます。
記念館の隣にあるのは、「菊正宗酒樽マイスターファクトリー」。樽酒に使用する木樽造りの様子を見学できるので、足を伸ばしてみることをおすすめします。
菊正宗酒造記念館についてはこちら:公式サイト
神戸酒心館(福寿)
「福寿」の酒造である神戸酒心館では、きき酒コーナーでの試飲や、酒造りの工程をわかりやすく学べるビデオ鑑賞が可能です。見学ツアーによって所要時間が異なるため、ご自分の好みのツアーを事前に選びましょう。
敷地内にある料亭でお蕎麦や懐石料理などのランチを楽しむのも良いですね。
神戸酒心館(福寿)についてはこちら:公式サイト
沢の鶴資料館(昔の酒蔵)
170年以上の歴史がある建物、『沢の鶴資料館』は江戸時代末期に建造された「昔の酒蔵」を忠実に再現し、資料館として公開しています。外観だけでなく建物内も当時の造りを再現しており、兵庫県「重要有形民俗文化財」の指定を受けています。
当時の酒蔵の雰囲気を感じながら、酒造りについて学ぶことができます。ミュージアムショップではここでしか買えない日本酒や日本酒仕込みの梅酒、奈良漬けなども購入できますよ。
沢の鶴資料館についてはこちら:公式サイト
沢の鶴資料館についての特集はこちら
【事前にチェック!】酒蔵見学の3つのマナー
酒蔵見学に行く際は、最低限のマナーを守りましょう。ここで3つのマナーをご紹介します。
1. 公共交通機関を利用しよう
お酒は少量でも飲めば「飲酒運転」です。試飲くらいは問題ないと考えず、車ではなく公共交通機関を利用しましょう。車を運転する方は、日本酒はお土産の楽しみにとっておきましょう。
2.予約が必要かどうかを確認しよう
酒蔵によって、休館日以外は常時見学が可能な場合と、事前に予約が必要な場合があります。まずは行きたい酒蔵が見学可能か、見学の際には事前予約が必要かを必ず確認してください。
3.菌の持ち込みに注意しよう
日本酒は酵母菌を発酵させて造られます。納豆やヨーグルトなどを食べることで酒蔵に菌を持ち込んだ場合、菌が混ざって酒造りに影響がでる可能性があります。そのため、当日は発酵食品の摂取を控えましょう。
沢の鶴資料館など、現在酒造りに利用されていない施設の見学であれば、菌については気にしなくても問題ありません。
そのほかの灘五郷の楽しみ方
蔵開きイベントに参加しよう
灘五郷には、イベントを開催している酒蔵があります。多くの蔵で開催されているのが、蔵開きイベントです。
沢の鶴でも、例年3月に蔵開きイベントを開催しています。酒蔵開放や、ステージイベント、鏡開きや樽酒試飲、高級酒の有料試飲など、日本酒の魅力をたっぷり堪能できる1日を過ごせます。
※感染症対策の影響で実施をしない場合もありますので、詳細はホームページをご確認ください。
まずは通販で灘の酒を楽しむ
ここでは、灘五郷で造られる沢の鶴の日本酒を厳選して3つご紹介します。
酒どころ灘五郷の歴史を感じてみたい方は、まずは以下の3銘柄から試してみてはいかがでしょうか?
特別純米酒 実楽山田錦
「特別純米酒 実楽山田錦」は、山田錦の特A地区兵庫県三木市吉川町実楽の希少な山田錦を使用した、やや辛口の特別純米酒です。灘五郷の日本酒の特徴である灘の宮水を使用しているので、灘五郷の伝統的な味わいを感じられます。
- 特別純米酒
- 山田錦を100%使用
純米酒本来の旨みに、芳醇な香りとキレの良さが特長です。
- アルコール度数:
- 14.5度
- 飲みごろ温度:
- 【冷】15℃付近(涼冷え)、【燗】35℃(人肌燗)~40℃(ぬる燗)
Kobe1717
「Kobe1717」は兵庫県産山田錦を100%使用し、灘の宮水で仕込んだコクのある味わいとフルーティーな香りを楽しめる日本酒です。六甲山から見下ろした日本を代表する港町である神戸の風景をパッケージにした、兵庫県限定商品です。
「兵庫県認証食品」や「五つ星ひょうご」にも認定されています。
この商品は、神戸のお酒で子供を支援する目的で、「Be KOBE ミライPROJECT」にも参画しています。
- 純米吟醸酒
- 兵庫県限定商品
兵庫県が誇る「神戸」の景色をパッケージにしました。お土産だけでなく、テーブルで映えるデザインは食卓を楽しく彩ります。
- アルコール度数:
- 13.5度
- 原材料:
- 米(日本産)・米麹(日本産米)
おわりに
灘五郷は地域の名称でなく、兵庫県神戸市灘区新在家から西宮市今津灘地区までを中心とした日本酒醸造が盛んな5つの地区の総称です。
灘五郷が栄えた理由は、古くから日本酒を醸すための最適な環境と遠隔地への海上輸送を実現できたことで、上質な「下り酒」を造る地区として評判が高くなったためです。
その名残として、灘五郷では、さまざまな酒蔵が日々おいしい日本酒造りに勤しんでいます。
令和2年度には日本遺産『「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷』として灘五郷の日本酒にまつわるストーリーが登録され、灘の酒は今後ますます注目を浴びるでしょう。
今回は、灘五郷にある沢の鶴で楽しめるおすすめの日本酒も厳選して3銘柄紹介しました。灘五郷の日本酒の味を試したい方は、ぜひ参考にしてください。
1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。
沢の鶴はこれからも日本酒文化を大切にしながら、みなさまの毎日の食事がもっと美味しくなるお酒造りを続けていくと共に、このWEBメディア『酒みづき』を通して、より多くの方々に日本酒の美味しさや楽しみ方に関する情報をお届けしてまいります。
沢の鶴コーポレートサイトはこちら
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※お酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量を。飲酒運転は、絶対にやめましょう。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児に悪影響を与えるおそれがあります。
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