2018.11.26日本酒を知ろう

「生酛(きもと)造り」ってどんな製法?「山廃仕込み」との違いとは

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生酛(きもと)造りとは

日本酒のラベルに、「生酛(きもと)」と書かれているのを見たことはありますか?日本酒好きの方ならば、一度は目にしたことがあるかもしれません。ですが、「生酛(きもと)とは何なのか?」が分かる方は、あまり多くないのではないでしょうか。
今回は、「生酛(きもと)造り」とはどのような製法なのか、生酛(きもと)造りの日本酒の魅力、さらに製法が似ている「山廃仕込み」との違いについてお伝えします。

生酛(きもと)造りとは

酒母を手作業で造る製法珍しい漢字ですのであまりなじみがないかもしれませんが、「生酛」は「きもと」と読みます。

酒母を手作業で造る製法が、「生酛(きもと)造り」

生酛(きもと)造りを端的にいえば、「酒母を手作業で造る製法」です。

日本酒を造る過程に「酒母造り」があります。酒母とは、蒸した米と水に麹、酵母、乳酸菌を加えたもので、酵母を培養することによって日本酒の発酵の元になるものです。この酒母が、日本酒の原型である「醪(もろみ)」のベースになります。

酒母は糖をアルコールに変える酵母の集合体のようなものですが、酵母とともに重要なのが乳酸菌の存在です。乳酸菌から生まれる乳酸には、日本酒にとって必要のない雑菌を死滅させる役割があります。乳酸が入っていない酒母はさまざまな雑菌によって侵食され、やがて腐ってしまいます。酒母において、いわば酵母と乳酸は二人三脚の存在といえるわけです。

通常の日本酒造りでは乳酸は人工のものを使いますが、生酛(きもと)造りでは乳酸も手作業で造ります。人工の乳酸を使った酒母を「速醸酛(そくじょうもと)」、天然の乳酸を使った酒母を「生酛(きもと)」と呼びます。

乳酸菌を添加せず、一から育てる方法

今でこそ乳酸は人工的に造られたものがありますが、精製された乳酸がない時代は乳酸も手造りでした。空気中や蔵の壁、天井など自然に自生する乳酸菌を繁殖させて酒造りに使っていました。

米や米麹をすり潰し、溶かしてドロドロの液体にして乳酸菌が発生しやすい環境を作り、空気中の乳酸菌を取り入れ、増やしていきます。

乳酸菌を一から培養するのには時間がかかり、速醸酛(そくじょうもと)の場合、酒母は約2週間で出来上がるのに対して、生酛(きもと)は約1カ月かかります。生酛(きもと)は時間も手間もかかる、昔ながらの酒造り製法というわけですね。

生酛(きもと)造りと山廃仕込みの違い

生酛(きもと)造りと山廃仕込みの違い生酛(きもと)造りと似た製造方法に、「山廃仕込み」があります。日本酒のラベルにもよく「山廃」や「山廃仕込み」という言葉が使われていて、その字面を見たことがある方は多いのではないでしょうか。

実は山廃仕込みは、生酛(きもと)造りと兄弟のような製法なのです。

「山卸し」の作業を廃止した造り方が「山廃」

先程お伝えしたように、生酛(きもと)は米や米麹をすり潰し、液体にして乳酸菌の繁殖を待ちます。この米や米麹をすり潰す工程のことを「山卸し」と呼びます。山廃仕込みは、山卸しをせずに乳酸菌を培養して、日本酒を造る製法を指します。【山】卸しを【廃】止した製法なので、山廃というわけです。

山卸しの工程で重要なことは米を溶かすことですが、技術革新や研究の成果により、明治時代末期には山卸しをしなくても麹から溶け出した酵素の力で米が溶けることが分かりました。

山卸しは、冬の寒い時期に深夜から早朝にかけて1日に何度も酒米をかき回し、すり潰さなければならない重労働です。加えて、熟練の技術が必要なため、誰でもできるというものではありません。山卸しをしなくても酵素が米を溶かすことが分かり、「山廃仕込み」も製法のひとつとして取り入れられるようになりました。

生酛(きもと)造りは濃醇な味わいが楽しめる

生酛(きもと)造りの日本酒は、深みのある味わいとコクが魅力です。加えて、手造りの酒母から育った酵母菌は生命力があり、丈夫で長生きといわれています。発酵の最後まで生きているので、余分な糖分を残さないのが大きな特徴です。
生酛(きもと)造りは、いわばお米の旨みを最大限に引き出す製法なのです。スッキリとしたキレがありつつも濃醇なその味わいは、燗酒にぴったりです。

おわりに

生酛(きもと)造りの日本酒は、昔ながらの製法で手間と時間をかけて造る伝統的なお酒です。それだけに大量生産は難しく、いつでもどこでも手に入るというものではありません。コク深く、パワフルで濃厚な飲み口ながらスッキリとした味わいの生酛(きもと)造りの日本酒。お店で見つけたら、ぜひ一度試してください。

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酒みづき編集部

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